以下、もう一回見る時のためのメモと初見での感想。ネタバレしかありません。
あと、記憶が適当なので間違ってるところも多々あるかも。
どういう話だったのか。
フルート奏者で中学時代強豪校の部長だった笠木希美。希美に中学一年生の時にひとりぼっちだった自分を希美に誘ってもらったオーボエ奏者の鎧塚のぞみ。ひよこが親鳥についていくように、希美を追いかけていたみぞれには美しく強い翼があった。
高校3年生。そう遠くない未来にみぞれは希美の手の届かない遠い空へ羽ばたいていく。それを予感させる、そういう話。
ミスリーディングの嵐
原作は未読です。TV版、映画版は全部見てます。その上で、ミスリーディングの嵐で謎解き小説かよ、と思わせるくらい色々なピースがはまった時の快感がありました。
・振り向かない希美
希美は最後のシーンまでみぞれに振り向きません。なぜなら、希美にとって、みぞれはついてきて当然だからなのです。それ故、希美がみぞれをプールに誘った時、みぞれが梨々花を誘っていいかと聞かれると、驚いてしまうのです。希美としてはフルートパートの人とばかり付き合っているので、ふたりだけでプールに誘えばみぞれは喜ぶと思っていたのでしょう。でもそうではなかった。嫉妬ではなく驚いてしまうんですね。
・ユーフォ2 4話での希美の話は本当か
希美は北宇治での1年生の大量部活退部の中心人物でした。TV版のユーフォ2ではまじめに部活していたみぞれには声をかけられなかったから、みぞれには無断で部活をやめたことになっています。でも、リズを見るとそうじゃないとわかります。希美にとって、みぞれは付いてきて当然だから声をかけなかったのだろう、と強烈に想起させられます。
・リズと青い鳥
これは勘のいい人なら途中で気がついていたかもしれませんね。劇中曲のリズと青い鳥には原作があり、ひとりぼっちのリズのもとに青い鳥が少女として訪れます。リスは青い鳥の少女を大事に思うのですが、リズは青い鳥を空に返します。大好きだから。自分には行けない所に行けるから。
吹奏楽パートではみぞれのオーボエがリズ役、希美のフルートが青い鳥役となっています。なので、最初はみぞれがリズなのかな、と思って見ていて、なんだか違和感があるなあ、と。そして、みぞれこそが翼ある青い鳥であることがわかる脚本は本当に見応えありました。
久美子と麗奈 の合奏の意味
第三楽章のソロパートはリズが青い鳥に空に羽ばたきなさい、わたしから飛び立ちなさい、とその手を離すシーンをオーボエとフルートで演奏します。劇中で久美子と麗奈がリズと青い鳥の第三楽章パートを演奏します。リズ役が久美子のユーフォで、青い鳥役がトランペットの麗奈です。その演奏にたいして、夏紀先輩が「またね、みたいだねー」って言います。
リズと青い鳥を見終わったあとだと、これがみぞれと希美の未来だということがわかります。麗奈は音楽学校に言ってプロになるでしょう。久美子は演奏はやめないでしょうけれど、プロにはならないでしょう。
仲のいいふたりを出すことで、みぞれと希美が卒業後に別の道を選ぶことを暗示していて、うまいなあ、と思いました。しかも、それがユーフォファンへのファンサービスになっているところも。90分しかないのに、こうやって詰め込めるんだなあって関心しきりでした。
一見残酷な
ユーフォ作品としては監督も言っていますが、吹奏楽がクライマックスにはなっていません。クライマックスは間違いなく、水槽前でのみぞれと希美のハグです。
そして、ここで、絵本のリズと青い鳥とみぞれと希美がシンクロするのです。
中学一年生の時、ひとりぼっちだったみぞれを吹奏楽部に誘ってくれた希美。だけど、部活の中心にいた希美には密に接することもできなかったみぞれ。中学時代、ハグしてお互いの大好きを言い合った部のみんなに交じることもできなかった。
精一杯の思いでどれだけ希美のことを好きかハグしながら、声の小さいみぞれが叫ぶシーンはもうたまらなかったです。
でも、それにたいして返ってくる希美の言葉は「みぞれのオーボエが好き」でした。一見残酷だなあ、と思いました。お前本人を好きって言ってるのに何言ってるのって。
でも、そうじゃないんですね。あれは希美が鳥かごのかごの扉を開けるセリフなんですね。
「わたしには見られない大空に行って、みぞれ!!」って。
それが「みぞれのオーボエが好き」なんですよね。もう、本当にたまりませんでした。
脚の演出と山田監督の進化
山田監督といえば、脚ないし、下半身だけの描写で登場人物の心情を描写することで有名だと思います。劇場版けいおんもみごとでした。
今作ではそれがシーンだけではなく、作品全体に昇華されていることに驚きました。
作品終盤、みぞれと希美の脚だけのカットが続きます。そして、ふたりは正反対の方向へ、スタスタと歩くのです。
ああ、山田監督のあのショットは作品のキモとして結実するまでのものだったのだなあと。たんなるカットの美しさではなく、みぞれと希美が別の道を歩むことを美しく描いていてたまりませんでした。
良い部長。ないし、マネージメント
TV版ユーフォを見ていた人は優子部長と夏紀副部長の見事な部長ぶりと副部長ぶりに感動するでしょう。ああ、人をちゃんと見ているんだなあって。TV版を見ていないとわからないですが、部長の優子はトランペット、副部長の夏希はユーフォニアム。
TV版を見ていればわかるのですが、麗奈のトランペットと久美子のユーフォニアムでは演奏技術でもう差がついてるのがわかるのですね。
でも、麗奈は部長にはなれない。久美子も副部長にはなれない。
みぞれが希美に捨てられたと思った時、誰よりもみぞれを助けたのは優子先輩だった。だからこそ、優子先輩が部長でよかったなあ、と思わせてくれるシーンはうれしかったです。短いシーンなのに。
山田監督と水槽
今作ではふぐでしたけど、どれだけ好きなんだろうとは思いました。自分の気持ちを伝えるでもなく、伝える言葉も無い時の演出なんでしょうか。けいおんおトンちゃんの時には唯のモノローグがあったような。
新山先生のすごさ
リズと青い鳥の第三楽章、オーボエのみぞれとフルートの希美があっていないことは滝先生も橋本先生も新山先生もわかります。そして、その繊細さを滝先生も橋本先生にもわからないことがわかります。
希美に執着するみぞれには、大好きなものを手放すことが理解できません。したくないだけかもしれません。
のぞみのパートは青い鳥を手放すリズの役です。
そこで、新山先生はリズの気持ちを理解しなさいとはいいません。手放された青い鳥は幸せだった、と聞くのです。
うまいなあ、と。みぞれには希美を手放す思いはないです。ずーーーーーっとひっついていたい。だけど、そこから一歩引いて、手放された方は不幸かしら、に答えはでない。
青空に青い翼で遠くへ。色々な街を見た青い鳥そのものが不幸か、と言われると、「そうじゃない」としか言えない。
その結果、あのオーボエを吹くのです。リズが手放したことは理解できない。けれど、大空を飛ぶ鳥は不幸ではないだろうと。
天才は天才を知る
みぞれが全力を出せていないことを麗奈がわかることはTV版を見ている人にはすぐ伝わるけど、映画版だけでも納得いける演出にしているのはうまかったと思います。
みぞれはだめな演奏は一切していない。ただ、もっとできることをやっていない。
全力全開な麗奈でこそ言えるセリフだったと思います。
別離
リズでは山田監督がずっとできなかった別れを描いた作品だと思います。けいおん!!で、卒業のさみさを丁寧に描いていましたが、けいおん!!ではあの4人組は大学まで一緒ってことがわかってました。
それ以降、たまこ、聲の形と別離がない作品を選んでいたわけで、苦手なんだと思います。希美に言わせているくらいハッピーエンドが好きなんでしょう。
でも、上述のとおり、リズではみぞれと希美がラストで脚だけで、90度別の方向に進みます。
また、会えるかもしれません。でも、人生のうち、たかだか6年、希美が部活をやめたあとを鑑みると5年しかあっていない人とはもう会わないかもしれません。
それじゃあ何だって話
日曜日、部活で登校するみぞれが希美が来ることを待って、鍵を借りて、音楽室に行く。これだけでこんなに美しい作品はない。希美が前で、みぞれがひよこのようについて行く。恐ろしいまでに美しいシークエンスなんだよ。
その途中で希美がみぞれに青い鳥の翼の羽を与える。
ああ、って思うよね。希美は地を這う生き物だけど、みぞれに翼を与えたのは間違いなく希美なんだよね。
そして希美はみぞれと歩いても振り向く。もう、ついて来ないかもしれないと思うから。
そして、青い鳥、みぞれが羽ばたくことは、間違いなく予想されている。
大学生になった麗奈が久美子に「みぞれさんすごかったよ」って言って、いつものように久美子が「うん」って言う未来を想起させてくれる作品でした。
適当に書いてるのでなんか、違うとかあったらコメントとか入れていただけるとうれしいな。
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