2012年12月26日水曜日

特撮メイキング

【映像特典】メイキング・オブ・キングギドラVSりつまこ
さつけんP

 

人形アニメをどう作るかという知識はあるので意外ではないが、それでも作業量に驚く。また映像内ではあれだけ広く見えるのに実際のステージが狭いことにもびっくりした。

カメラアングルの変化による巨大感の出し方や、玩具の操演の仕方等は特撮そのもので意外性はないんだけど……。

一番難しいのはこのメイキング内で例として出ている1ショット、1ショットがスチルとしても画になっているところだよね……。人形を撮れといわれてもあのポーズ、カメラアングルを思いつくことがそもそもできない。 

さつけん監督の作品は楽しい。本当に「楽しい」。広いニコマス界でも「楽しい」作品を作れる人はそう多くない。綺麗な作品、凄い作品はいっぱいあるけれど。

もちろん、楽しさが伝わるように作れる監督の才能もあるだろう。でももっと大きなものがある気がしてならない。これは観念論になってしまうのだけど、監督のおもちゃ好きという気持ちが作品を通じて伝わってきているような気がしてならない。驚くほど手間がかかっているだろう。それでもきっと監督は楽しんで作っているのだと思う。

次回作が楽しみでならない。

2012年12月19日水曜日

アイドルマスター サクラ大戦 「Happy Day Happy X'mas」の感想

アイドルマスター サクラ大戦 「Happy Day Happy X'mas」
ぴっかりP


ぴっかりPにしては肩の力の抜けた作品。めんどくさいこと死ぬほどやってそうだけど。

それでも今年の下期のぴっかりP作品ではこの作品が一番好き。作ったんじゃなくって最初からこうだったんじゃね?感が最高。途中に挟まる例えばやよいの台詞が入るシーンとか見ればそんなわけないのはわかるんだけど。ここまで違和感をなくせるんだなあ、ってほけーってしながら見てた。歌にダンスを合わせるというニコマスの根源的な面白さがここに結実してる。いい歌にアイドルたちが楽しそうに合わせている。それだけでいいよね。

スローシンクロって面倒なんだよとか、ちゃんと楽曲に合うダンスを選ぶのは大変だとかカットの割り方がうまいとか、もうそういう技術的なことはどうでもいい。クリスマスに合わせてサンタ衣装の彼女たちが楽しそうに歌っているだけで幸せ。それだけでいいよね。ぴっかりPのダンス大好きだ。

個人的には律子のウィンクのカットが最高でした。派手さがないだけにぴっかりPの地力がストレートに伝わってくる作品だったと思います。

2012年12月16日日曜日

後継者たち

【アイドルマスター】VESPERIA
ドドリアP

 

冬なのに熱い。ドドリアP描くアイドルたちの戦いが。敗れ去った竜宮小町の復活を誇り高く描写した傑作「【アイドルマスター】DIAMOND」の裏側とその未来を描いたこの作品もまた傑作であった。

激戦の末、春香、千早、亜美のトリオ「シーフー」に敗れた竜宮小町たちは律子のもと再起をはかる。 傷の癒えたドラゴンに挑むのは若き妖精たちであった。

フェアリーの三人の表情が実にすばらしい。レッスンに参加できること、デビューできたこを素直に喜ぶ描写から決戦での凛々しい佇まいへの変化がただダンスのみで表現されている。おそらく最初に当たった大きな壁なのだろう。そしてまた、勝ち残って来た者としての責任の重みを感じてのものでもあろうか。彼女たちの後ろには必ず敗れたものがいるはずなのだから。再挑戦者である竜宮にとってフェアリーは挑戦者への挑戦者なのだ。一度は勝ち、そして敗れたという経緯を持つ竜宮とまっすぐ伸びてきたフェアリーという対比は実に楽しかった。

曲はおとなしめだがダンスはあいかわらずピカイチ。衣装の選択もすばらしい。おそらく竜宮への挑戦権を獲得した時のものであろう、竜宮の「マイディアヴァンパイア」とフェアリーの「ワイヤードマリオネット」。赤と青の対比が美しい。そしてもちろん決戦は「プリンセスメロディ♪」と「ビヨンドザスターズ」だ。かつての栄光の衣装「パレスオブドラゴン」ではなく今の竜宮小町を象徴する「プリンセスメロディ♪」が彼女たち三人の笑顔とともに輝き、作品はフェードアウトしていく。

きっとバトンは渡されたのだと思う。それは受け継がれていくのだ。

2012年12月4日火曜日

映画的な描写

みんなが待っていた厨二病的フェンシングカードゲームニコマス作品の後編が半年の時を経てやってきた。

律子と美希でつんつんアンギャルド 後編
ダイヤモンドP

 

映像の美しさや心理戦まで含めたゲーム描写のうまさにつていては是非作品を御覧ください。この感想文ではダイヤモンドPの映画的手法について書きたいと思います。と言っても大げさなものではなく、登場人物の心理描写をきちんと映像で描いているところについてです。当たり前と思われるかもしれませんがこれが案外むずかしい。どうしても「思っていること」をそのままモノローグやダイヤログにしたくなるんですね。そうすれば少なくとも登場人物の思いは伝わるからです。しかし映像作品でそこまで語ってしまうのはもったいない。表情だけでも十分に思いというものは伝わるものですし、そうでなければ映像作品である必要性が少なくなると思うのです。言うだけは簡単ですが実行するには難しい。しかし、それが出来た時には饒舌に語られるより人の情動に訴えるのではないでしょうか。

この作品でも律子や美希の心理描写は言葉として表現もされています。しかしその部分はゲーム解説の一端なのですね。律子がなぜ強いか、を合理的に説明するためのものなのでこれは必須です。それ以外では登場人物の心理は文章としては語られていません。それでも登場人物の心情が伝わるというところにこの作品の良さがあるのだと思いました。特に貴音がそうですね。正解があるわけではないけれど、伝わってくるものがあるという楽しさ。人によって受け取り方は違うでしょう。それでも語らないことによってより強く訴えるものがあると思いました。以下に印象的な部分をスクリーンショットとともに記そうと思います。以下ネタバレ全開。


知ってた

アイドルマスターシャイニーフェスタ MUSIC♪をひたすら褒める動画
西岡P


うん、PVの感想文を書くならこの方法が一番いいよね。もちろん自分の文章力を棚に上げるわけですけど。どれだけスクリーンショットを貼っても動画の気持ちよさの「ここ、ここが好きなんだ!」は伝わらないかなあ、と。タイミングを文章で描くことってどこまでできるのかなあ。諦めて好きです、気に入りました、だけでもいいとは思うんだけど。所詮感想文だしね。それでもなあ。

愚痴になっちゃいましたけど、この動画はほんといいですよ。どう好きか、何故好きかが本当にストレートに伝わってきますから。

大本の作品の13人ライブはプロが投げかけた挑戦状のようにも見えました。MMD等でオリジナルを作れるといってもここまでのクオリティのものは見たことがありません。マイクを持ったアイドルは待望していただけに嬉しい作品でした。

積み重ねるということ

アイドルマスター サクラ大戦 「愛が香るころに」
ぴっかりP


すごい好きでずっと感想文を書きたかったのだが、色々言葉にならない。多くの人が見ていること、驚嘆と喜びに満ちたコメントだけでもういいよな気がする。それでもやっぱり自分の思いを残しておきたい。動画としてのよさについてはもう見てください以上に書くことはないのでそれ以外のことと単にわたしが好きだった箇所の感想だけでも。


相変わらず凄まじい技術だが、その技術のほとんどはアイドルマスター サクラ大戦 「奇跡の鐘」」 の段階で完成の域に達している。多人数を違和感なく並べることやダンスの後ろに人を歩いて移動させること、リップシンクロ、被写界深度など。この完成度をもってしてもぴっかりPは満足していなかったようだ。おそらく頭の中に理想のアイマス歌劇団があって実際の作品はまだまだ足りていないのだと思う。理想は理想で決して手が届くことはないだろう。それでも、ぴっかりPはそれに一歩でも近づくために歩みを止めることはないのだと思う。満足せずに積み重ねることにぴっかりPの凄みがあるのだと思う。

今まではサクラ大戦の歌劇団の衣装にも合わせるように凄まじい労力を使ってきたと思われる。今作ではそれを捨てている。アイドルマスターのアイドルたちがサクラ大戦の歌劇団の楽曲を演じるという根源に立ち戻った作りになっている。そのかわりに得たものは2の高い解像度を生かした広い舞台だと思った。ロングの映像で楽しそうに歌い、踊るアイドル達を見ているだけで幸せになれる。2でもアイドルマスター サクラ大戦 「巴里よ、目覚めよ」」  のように衣装を合わせることも可能だが、今回はその労力を歌とダンスにまわしたのだと思った。そのせいだと思うがのびのびと踊る彼女たちを見て頬がゆるむ。

総論は以上までとして個別に好きなシーンをスクリーンショットとともに書きたい。














まずは何と言っても間奏部分。特段に重い歌ではないがそれでもサクラ大戦オールスターズという緊張感のある楽曲の中でこの箇所がふっと軽やかになる。それにあわせてフォーエバースター☆☆☆の彼女たち軽やかに踊る。息を詰めて見ていたこの作品でっと息を吐ける瞬間とでも言おうか。こういうふうに作品を構成できるところがぴっかりPの凄みだ。スクリーンショットはぴっかりPが大好きなちーちゃんソロで。














7人同時ダンスではアイマス2の解像度の高さがうまく使われていると痛感させられた。無印、L4Uではどうしても少しぼけた感じになるし、ここまで引いた画を衣装替えして表現することは困難だと思う。今回サクラ大戦への衣装合わせを諦めてでもこういう画作りをしたかったというぴっかりPの意図が感じられる。

次は6人以上を舞台に上げる時にぴっかりPが行った丁寧な技術についての感想を書きたいと思う。














くさび形の隊列の先頭に立つ春香さん。ここから、














このようなカット(上の画とあずささんと真美の立ち位置に注意)を挟むことにより、















くさび形が逆になっていることを違和感なく見せている。タツジン! ロングでやりぬくことも可能だろうが、アイドルの動画なのだからやっぱりアップは見たい。舞台に大勢を並べるだけではなく、きちんとアイドルのPVとしての作法を守りつつ、視聴者に隊形移動をすんなりと想起させる構成が見事。

余談になるが、ふたつ上のあずささんの画のように目を閉じて笑顔と表現するのは日本の漫画やアニメの文化の特徴らしい。確かに洋の東西を問わず目を細めることはあるがこのように目を閉じる表現方法はあまり見かけない。ぴっかりPの動画ではリップシンクロが話題になるが目も見ていて飽きない作りになっている。














このカットは髪が流れる乙女真を残しておきたいだけw

  












凡百のセンスじゃないなと思い知らされたラストの画。見て分かる通り春香さんの両脇が少し開いている。春香さんが「この楽曲では」センターなんだという画作りのうまさ。上に貼ったくさび形の画ではこうはなっていないが、締めはこうでなくちゃと思わせる説得力がある。

以上でこの作品単体への感想は終わりなのだが、もう少し続きを。以前、 ダンスが楽曲に合っていればニコマスとしてはもうそれでいいのじゃないかという感想を書いた。この感想では神はやっぱり細部に宿るね、という結論だったがひるがえす。ニコマスのダンスPVの楽しさ基本はそこなんだと思ったから。

ありがたいことにまたぴっかりPから仮組みを見せていただけた。


 

このダンスの選択と構図の選択のすばらしいこと。もちろん、完成作の方がいいに決まっている。それでも、このままブラッシュアップしただけでもわたしにとって忘れられない作品になっただろう。やはりダンスPVはダンス選択とシンクロが骨なのだと思う。イフェクトも抜きも作品に寄与することは当然だ。しかし、ダンスPVはアイドルたちが踊っていることそのものに楽しさの本源があると改めて思わされた作品だった。